Google・OpenAI・Anthropic、AI安全ルールを自前で策定か ― 開発者への影響
法律ができる前に、AI企業の利用規約が先に変わり、開発者に適用される可能性がある。
Google、OpenAI、Anthropicの3社が、AIの安全ルールを自ら決める団体の設立を準備していると報じられた。団体名はSAFA(Standards Authority for Frontier AI、最先端AI標準機関)だ。Frontier AIとは、最も高性能なAIモデルを指す。新しいAIを公開する前にどんなテストに合格すべきか、事故が起きたときどう報告するか、誰が監査するかといった基準を決める組織だ。
この情報は米IT専門メディアのThe Informationが匿名の関係者を引用して伝えたもので、3社が正式に発表したわけではない。発足時期は2026年末から2027年初めとされている。
なぜ企業自身が動くのか
米国には、最先端AIを直接規制する連邦法がまだない。報道によると、3社はもともと政府による監督を望んでいたが、関連する大統領令の草案が政権内で十分な支持を得られず、民間主体の方式に向かうことになった。
SAFAは、米国の証券会社が自主的に作った監視団体FINRAをモデルにしているとされる。ルール違反をどう処罰するか、モデルのテストを自ら行うのか外部機関に任せるのかは、まだ決まっていない。
政府と議会の現状
- 大統領令(6月2日):大統領が議会を通さずに出せる指示。今回のものは任意参加で、企業はモデルの公開前に最大30日間、政府に早期アクセスを認めるよう求められている。許可を得なければ公開できないという内容ではない。
- 下院FRONTIER Act(7月23日):大規模なAI開発企業に、モデルの説明書、リスク管理計画、外部監査、事故報告などを規模に応じて段階的に求める法案。
- 上院:マリア・キャントウェル(Maria Cantwell)上院議員が10月7日に発表したのは法案ではなく原則の提案。独立した監査に合格するまでモデルを公開しないようにする、という内容だ。
開発者に起こりうる変化
以下は報道をもとにした筆者の推測と助言だ。
現時点で開発者に新しい義務はない。SAFAはまだ存在せず、大統領令は任意で、法案も成立していない。ただし、ルールが固まれば、AI企業のAPI利用規約や公開プロセスを通じて開発者に届く可能性が高い。
- 利用規約が変わる可能性:事故報告や外部監査が求められるようになれば、AI企業はAPI利用条件を見直す可能性が高い。AIがユーザーの代わりにコンピューターを操作する「エージェント」機能が、最初の対象になるかもしれない。
- 新モデルの公開が遅れる可能性:政府の早期レビューに参加すれば、公開前に確認の段階がひとつ増える。
- 安全性の評価結果が比較しやすくなる可能性:テストが標準化されれば、モデルごとに異なっていた評価資料を同じ基準で読み比べられる。
- 小規模チームに不利になる可能性:大手が監査基準を決めると、それを満たすコストが小規模チームやオープンソースにより重くなるという批判がある。下院の討議草案には、州ごとのAI法を3年間新たに作れなくする条項も含まれている。
特定のモデルに大きく依存しているなら、AI呼び出しをコード内の1か所にまとめ、自前のテストセットを用意しておけば、後から提供元を乗り換えやすくなる。
今後の注目点
SAFAの正式発表と基準案、州AI法を凍結する条項が最終的な法案に残るか、AI企業の利用規約の改定。
出典
- Google, OpenAI and Anthropic plan AI safety body (The Next Web)
- Promoting Advanced Artificial Intelligence Innovation and Security (The White House)
- Trahan, Obernolte Introduce Bipartisan FRONTIER Act to Strengthen Oversight of Advanced AI (Rep. Lori Trahan)
- Unpacking the Great American AI Act (DLA Piper)
- Cantwell Outlines Comprehensive Governance Framework for Safe and Secure Frontier AI (U.S. Senate Committee on Commerce, Science, & Transportation)
出典: thenextweb.com